French English



お知らせ

現状レポート

八ッ場ダムとは

八ッ場ダム計画の問題点

解決の糸口

八ッ場あしたの会について

参考図書・リンク

資料集ページ

サイト内検索

支援していただいている助成団体
Special Thanks to:

アウトドア自然保護基金
アウトドア自然保護基金

パタゴニア ロゴ
パタゴニア

HOME  > 八ッ場ダム計画の問題点  >  八ッ場ダム計画の問題点:序論

序論

(2008年11月12日更新) 嶋津 暉之

三度目の基本計画変更

2008年9月、八ッ場ダム事業の工期を2010年度から2015年度に延長する計画変更が告示された。今回の計画変更は2001年の工期延期、2004年の事業費増額につづく三度目の変更で、変更内容は「ダム堤体の縮小」、「水力発電所の設置」も含まれる。

「堤体の縮小」は、岩盤掘削量を当初予定の149万m3から68万m3へ、ダム本体コンクリート量を160万m3から91万m3へ縮小するというものだ。この結果、本体関係工事費は613億円から429億円へと、事業費全体のわずか9%になった。

最近の横坑調査の結果、岩盤が思ったよりも良好であったからだという話になっているが、実際にはダムサイトの岩盤断面図をみると高透水帯や熱変質帯が広く分布しており、今回の堤体大幅縮小はきわめて危険な判断である。今後、本体掘削等において予想外の地質が現れて、本体工事費が増額されることは必至と思われる。

今回は下流都県から計画変更に反対の声が出ないように総事業費4,600億円が据え置かれたが、再増額が必要となる要素は本体工事だけではない。付替国道の工事は半分程度しか進んでいないが、事業費はすでに3/4を使っており、増額せざるをえないであろう。また計画変更案では、工期が延びれば嵩むはずの営繕費などの間接経費の増額が見込まれていない。さらに大きな問題は東京電力㈱への巨額の減電補償である。近い将来に総事業費を再増額する、四度目の八ッ場ダム基本計画変更案が出ることが予想される。

ダムサイト予定地

付け替え国道と代替地の工事現場(川原畑地区)

今回の計画変更では、群馬県営の水力発電所を八ッ場ダムに付設することになった。国と県は、八ッ場ダムはCOm2削減にも貢献するとPRしている。だが吾妻川流域にはすでに東京電力(株)の多数の発電所があり、晴天時には流量の約8割が発電用水として取水されている。八ッ場ダムの貯水量を確保するためにはこの発電用水を大幅に削減することが必要で、その結果、新たな発電所の生み出す発電量より遥かに多くの発電量が八ッ場ダムによって失われ、その減電に対して巨額の補償が必要となる。

長野原取水堰の直下。吾妻川の水は今も発電に使われている


その頃、首都圏の水需要はどうなっているのか?

首都圏の人口は2015年頃にピークを迎えてその後は次第に減少していく。一人当たりの水道給水量はすでに頭打ちになり、漸減傾向になっているから、2020年頃は、水道用水は確実に減少傾向になっている。水余りがますます進み、八ッ場ダムなどは全く必要としない状況になっているであろう。



吾妻渓谷はどうなっていくのか?

吾妻渓谷の上流部は八ッ場ダムの建設工事によって大きな損傷を受け、ダム完成後は湖面の下に水没してしまう。残りの下流部も現在の美しさを保つ期間はそう長くはない。奇岩怪岩が立ち並ぶ吾妻渓谷の岩肌は、時折来る洪水によってその表面が洗われ、その美しさが維持されている。洪水が八ッ場ダムによって貯留されるようになると、岩肌をコケが覆い、いずれは草木も生えて、吾妻渓谷は下久保ダム直下の三波石峡と同様に、今の面影をすっかり失ってしまう。観光客が訪れることもなくなってしまうであろう。

吾妻渓谷


八ッ場ダムはどのようなダム湖になっているのか?

八ッ場ダムは洪水調節のため、7月~9月は満水位から28mも水位を落とし、土肌を剥き出しにして、底の方にしか水がたまっていない状況がつくられる。底にたまった水は異様な色を呈している。原因の一つは、藻類(植物プランクトン)の異常増殖である。八ッ場ダムの上流には、草津温泉等の多くの観光地、嬬恋のキャベツ畑や数千頭の牛がいる牧場などがあって、多量の栄養物が流れ込んできているので、ダムにより流水がたまり水に変わると、藻類の異常増殖がひどく進行していく。
もう一つの原因は中和生成物である。中和生成物の沈殿池である品木ダムはすでに 8割が埋まっているから、近い将来には満杯になり、中和生成物が流出する。この中和生成物は八ッ場ダム完成後には八ッ場ダム湖に沈殿するようになる。底の方にしか水がたまっておらず、異様な色を呈する八ッ場ダム湖は、観光資源としての魅力がゼロである。



川原湯温泉街はどうなっているのか?

川原湯温泉街川原湯温泉街はダムサイトの右岸(打越地区)と、現温泉街の山側(上湯原地区)に移転することになっている。前者の代替地造成は工事が進んでいるが、後者はまだ工事のめどがたっておらず、計画通りに代替地が造成されるのかどうかわからない。
実際に、代替地に移転して旅館業を続ける旅館経営者は決して多くないとされている。旅館経営者の大半は土地所有者ではないため、移転補償金では旅館再建に必要な資金を得られないという問題があるとされているからである。多くの旅館経営者は補償金を手にして、川原湯から出て行くのではないかと言われている。
代替地に移転して旅館を再建しても、旅館経営の見通しは決して明るくはない。今の川原湯温泉の魅力は吾妻渓谷の美しさと情緒豊かなひなびた温泉街にあるが、移転後はその二つとも失われてしまう。八ッ場ダム湖は上述のように、とても吾妻渓谷の代わりの観光資源になるものではない。



八ッ場ダムは完成後にはどのような経過をたどるのか?

ダムは堆砂によって徐々に埋まっていく。この堆砂が計画値よりかなり早く進行しているダムも少なくない。たとえば、下久保ダムの場合は計画値の約2.5倍の速度で堆砂が進んでいる。八ッ場ダムも下久保ダムと同様に、計画よりかなり速く堆砂が進行する可能性が高い。八ッ場ダムの流域面積あたりの土砂供給量が下久保ダムと同じであるとして、それに中和生成物の沈殿が加わるとすれば、(底の方から埋まっていく場合は)ダムが完成してから55年後には夏期利水容量が半減し、80年後には夏期利水容量がなくなる。1965年にダム計画が再度浮上してから約55年後に完成したダムは同じ年数でその利水機能が半減してしまう。



ダム湖周辺での地質上の問題は?

ダム予定地の両岸は、浅間山が噴火した際の泥流が吾妻渓谷でせき止められて厚く堆積しており、きわめて脆弱な地層である。ここにダムを築いて貯水を開始したため、ダム湖の周辺では地滑りが起き、周辺も支えを失い崩落するところが続出しているであろう。そして、住民が移転した代替地の山側は崩落の危険が高く、土石流が起きる心配にたえずつきまとわれているであろう。

2010年3月16日 衆議院国土交通委員会にて
八ッ場ダム問題に関する意見聴取における参考人の陳述資料として提出した資料
「利水と治水の両面から見た八ッ場ダムに関する意見」(嶋津暉之)
カテゴリートップ
一覧
次
八ッ場ダム計画の問題点:過大な財政負担